『監督失格』公開記念平野勝之監督特集 ~入門編を見に渋谷UPLINKに行って来ましたよ!

 私が行った入門編は『由美香』の上映とカンパニー松尾監督と東良美季氏のトークショー、翌日のDEEP編は『21歳-みたされない隙間の時-』と『わくわく不倫講座 楽しい不倫のススメ』の上映と雨宮まみさん、ペヤングマキさんのトークショーという内容。
 渋谷の東急本店の先のお洒落ゾーンにあるお洒落な建物の中の映画館って事で女性客やカップル客多目の客層。…このイベの1週間前に秋葉原のエロDVD店で行われたHMJMのイベント(カンパニー松尾監督も出演)では全く見当たらなかったサブカルの皆さんや!話題の映画・監督失格の関連イベだからでしょうか。それともUPLINKという会場についているお客さんなのでしょうか。
 そして奇しくも今回のイベントのちょうど一週間後、11月19日にUPLINKの近所のオーディトリウム渋谷って映画館でHMJMナイツってオールナイト上映やるんですけど、サブカルなお客さん達はそっちにも来てくれるかなぁ?第一夜って書いてあるから1回きりじゃなくてこの先も予定はあるんだろうけど、お客さんいっぱい来てくれた方がやっぱイベントの頻度も高くなるだろうし長く続いて行くと思うので皆さん是非見に行きましょう!
HMJMナイツ 第一夜「監督失格」+「UNDERCOVER JAPAN」
2011年最大の問題作『監督失格』上映記念。平野勝之監督も参加した幻の傑作オムニバス『UNDERCOVER JAPAN』を蔵出し劇場初上映!
2011年11月19日(土)オーディトリウム渋谷
■上映スケジュール
23:40-開場 24:00-上映開始
『監督失格』『UNDERCOVER JAPAN』上映
■料金(二本立て)
一律2500円 当日券のみ/11月19日(土)20:00より受付開始いたします

 この日上映された『由美香』はアダルトビデオとして発売された『東京~礼文島 41日間自転車ツーリングドキュメント わくわく不倫旅行 200発もやっちゃった!』を再編集して映画にした作品です。カラミのシーンを削った(と言っても全部切った訳ではなくちょいちょいそういうシーンもあります)劇場版。
 平野監督が自転車で日本の最北端を目指すというドキュメントを撮ろうとしていたら、当時愛人関係にあった林由美香さんが「面白そう。私も行きたい」と言い出し、2人で自転車旅行をするのならそれをAVにしようという事になる。が、その企画をV&Rに持っていくと「今は林由美香の名前では作品が売れない、林由美香の名前を出したいのなら最後に彼女にウンコを食べさせろ!それ位やるなら商売になる」と言われ、ゴール地点で彼女にウンコを食べてくれと言わなければいけないという目的を隠しながら自転車旅行をする…という作品です。

 いや、この作品ね、普通に面白いですよ。面白いって言うか楽しい。元々AVとして作られてるので良い意味での軽さというかライトさというか、『楽しいモノ感』があるんです。映画って楽しい作品を目指して作っても、どうしても『楽しい映画』にしかなんない作品ばっかりな気がするんですが、由美香は『楽しい映画』っていう枠をぬるっと飛び出してもうちょっと広いカテゴリーに行ってる感じがします。
 あぁでもこれは私がそんなに大量の映画を見てないからそう思ってるだけでもしかしたらちゃんと探せば同じように『楽しい映画』って枠を飛び出してる映画も結構あるのかもしれないっすね。そういう映画があったらこっそり教えて下さい。見てみます。

 実は上映後のトークショーの冒頭に松尾監督が「『由美香』面白かった?AVの方(わくわく不倫旅行)は見たし面白かったけど。…ホントに面白かった?」と何となく言いたい事があるけど大人だから言わない、けどちょっと言いたい、みたいな雰囲気を出してはったんですが、私だけじゃなく他のお客さんもわーっと笑ってるシーンとかも何箇所もあったし、みんな楽しんでましたよ!
 でもAVバージョンのわくわく不倫旅行の方が時間も長いだろうし、変な制約もないだろうし、2つの作品を比べて見たらわくわく不倫旅行の方が良いって話にどうしてもなっちゃうんだろうなぁ。。。
 実は由美香とわくわく不倫旅行、2つの作品を見ようと思ったら手に入りやすいのはわくわく不倫旅行なんですよ。わくわく不倫旅行はダウンロード販売してるから見たいと思えばV&Rのダウンロード販売のページに行ってお金払えば見れる。由美香はDVDでも出てるんですけどアマゾン見たら売り切れになってました。結構前に発売されてるDVDなので中古を足で捜して歩いて見るか、今回みたいな上映会があるのを神に祈るしかない。だから由美香の方が良いって言われるよりわくわく不倫旅行の方が良いって方が救いがありますな。

 由美香上映後、10分ほどの休憩を挟んでカンパニー松尾監督と東良美季氏のトークショー。1時間以上やってました。80分位かな?由美香の上映時間とそんなに変わらない位の大ボリュームw平野監督も来ないし、15分か20分位軽くトークして終わるだろうと思っててメモ帳とか持たずにふんわりした感じで聴きはじめたら内容は濃いし興味深い情報もバンバン挟みこまれるしでどうしようかと思いました。筆記具を持ってなかったので途中からiphoneでメモを取ったのですが、トークショーの内容をiphoneでってのはやっぱ無理がありますねw自分で読み返してもなんのこっちゃ解んないようなメモしか取れませんでした。すっげぇ濃い内容のトークショーだったから映像か録音でも記録残しておいて欲しいと終わった後に思ったんですが、ロフトプラスワンとかと違って会場に備え付けのカメラとかも無さそうだから何にも残ってないんかなぁ…とりあえずメモを元に覚えてる事を書いていきます。

 ・ 松尾監督が東良美季氏が以前書かれた平野監督についての文章を読んで、それについて色々語りたいって事でトークショー開始。その、今回のトークショーの元になった文章がこちら。 「ネット上にその文章があるので家に帰ったら検索して読んで下さい」って何回も言ってはりました。AV情報誌『ビデオメイトDX』で東良氏が持たれていた『ヴィンテージ~作家別AV作品研究』という連載の2003年6月号から2004年5月号の1年分(!)のテキストなのですっごい長いんですけど、今回のトークショーで喋ってはった内容なども入ってるので是非読んでみて下さい。

 ・ 平野監督が自主映画を撮ってぴあのフィルムフェスティバルで賞をバンバン獲っていた頃『ポストダイレクトシネマの旗手』というように呼ばれていたという話から、ポストダイレクトシネマとは?というお話。
 まず、ダイレクトシネマというのはドキュメンタリー映画のジャンルのうちの一つで、撮影と同時に録音し、ナレーションを入れず、事実をそのまま伝えることを目ざすという作品の事らしいです。
 んで、ポストダイレクトシネマっていうのは、ポストって付く位ですから、そのダイレクトシネマ以降の、ダイレクトシネマを元にしたもっと上位の表現って事になるのかな?上にリンクを貼ってあります東良氏の平野勝之とは何者なのかの中では「カメラ自身がまるで意志を持ったかのように撮り手の思惑すらも超えて暴走する映画」であると説明されています。

 ・ 80年代のアダルトビデオの表現について。
 アダルトビデオというジャンルが始まった時、アダルトビデオ以前からあった同じような目的のメディア・ピンク映画と同じ物を作っても負けてしまうというのがあったのでアンチピンク映画という立ち位置にならざるを得なかった。
 実は日本のエロメディアでは、表のアダルトビデオという物が生まれる前に裏ビデオが存在していた。洗濯屋ケンちゃんなどの裏ビデオは今までの日本人が見た事のないモノ(他人の性交中の局部)を見せていた。
 ピンク映画とは違った表現で、しかもちゃんと表で流通させる商品なので裏ビデオのように局部は見せられない。ではどのような表現を見せるかという最初の回答が『美少女』。
 80年代AVの『野原に白いワンピースを着た美少女が』というような幼い表現は70年代に高校で映画を撮っていたような映画少年の妄想。
 文系の映画少年は普段気軽に話しかけられないようなクラスの可愛い女の子と喋るきっかけとして「映画を撮るから出てよ」という手を使っていた。なので、高校の文化祭で上映されているような映画は可愛い女の子を撮るだけ、という作品が多かった。

 ・ 平野監督がAV監督になった経緯について。
 高校卒業後、地元浜松の工場でアルバイトをして貯めたお金で映画を作り、ぴあフィルムフェスティバルで賞を獲ったりしたので上京してきたが、映画の仕事が無くてコンビニでおにぎりを万引きしたりして暮らしていた。
 平野監督が撮っていた映画は河童の格好をした奴とラッコの格好をした奴が川原で戦うような作品だったので、面白いけどそういう作品を撮る監督に予算を与えて映画を撮らせてくれる人はいなかった。
 河童とラッコが戦う映画の他に、乞食とオカマが川原で戦う映画もあった。今をときめく園子温監督がその映画に乞食だかオカマだかの役で出ていて、川原で戦っていたのだが、裸足でやっていたので怪我をしてしまった。そこから怪我をした園監督が病院へ行く様子を撮影し、手当てを終えてまた川原に戻って戦うという所を作品にしたりしていたらしいです。
 仕事がないので自主映画の頃の知り合いを脅して「何か撮らせろ!」と迫ったらアダルトビデオを撮る事に。そうやって撮影したのが『由美香の発情期~レオタードスキャンダル』。でもこの作品の出来に全然納得出来なかった平野監督は「腰をすえてAVをやりたい」と言い出し、AV監督としてのキャリアをスタートさせたそうです。

 ・ 90年代の平野監督の周りの空気。
 バクシーシ山下監督が日常を映像として記録しなければいけない、という事をしきりに言っていて、松尾監督や平野監督もそれにとても影響されて日常を撮影しまくっていた。林由美香もそれを感じていたのでわくわく不倫旅行の中で2人が喧嘩をした際、それをビデオで撮影していなかった平野監督に対して「監督失格だね」という事を言った。
 バブルが崩壊した後でオウム事件や阪神大震災の前の「終わりなき日常の始まり」の空気。
 バクシーシ山下監督は「(80年代AV的な)美少女は白々しい。それに比べてV&Rがやっていることは清々しい」「昆虫のようにセックスをする花岡じったや(80年代AVには居なかった)少ない時間で何万円も貰えるからとAVに出る女も本能のままに行動していて清々しい」と語っていたそうです。
 安達かおる監督についてはいつか作品にしたいし本も書きたいと語る松尾監督。

 ・ AVの表現はアンチ日本映画・アンチ客観映画。
 「こういうモノを撮ろう」としては撮っていない。そうやって作った作品は失敗している、という話をしている途中で何かに気づいた素振りを見せる松尾監督。「あぁそうか!普通の映画ってのは目的のモノを撮ろうとして撮っているんだ!」。
 松尾監督は昔から映画は苦手でウォン・カーウァイを観るくらいだそうです。
 「自分の現場ではおはようございますみたいな業界っぽい挨拶はしない。朝ならおはようございますは言うけど。よーいスタートという掛け声も使わない」

 ・ 昔のAVのお話。 
 「宇宙少女の父・さいとうまこと監督の現場では撮影しているうちにスタッフがみんな女優さんを好きになってしまうが、アダルトビデオなので最後はその女優さんがセックスしてしまうのは確実。あぁセックスしちゃうんだ、という感じになってしまう」
 「カンパニー松尾監督がパリ人肉事件の佐川一政を長崎オランダ村に連れて行って撮影したAVや遠藤ミチロウが名前を隠して監督をしたAVがある」

 ・ 平野監督は「由美香は(あの有名な人食い鮫の映画の)ジョーズ」だと言っているそうです。
 平野監督は小・中学校時代、図工以外はオール1だったので高校に行けず、浜松中の高校に行けない成績の子達が集まる専門学校みたいな学校に行ったとの事。井口昇監督も小・中学校時代オール1だったそうで、園話を聞いた平野監督は井口監督の事をさんざんいじっていたが実は自分も同じような成績だったと後でバレた。

 ・ ラスト近くで松尾監督が「(ポストダイレクトシネマなど色々な言葉があるだろうが)大切なのは平野監督がどういう位置で評価されるか」「最近はダウンロード販売などで古い作品も見れる。なので90年代のAVをちゃんと(した文脈で)評価して欲しい」という事をおっしゃってました。これは勿論自分の作品を評価しろって意味ではなくwネットを検索したりしても個々の作品についての感想なんかは見つかるけど90年代のAVシーン全体について研究・解説したような文章とかがないからそういうのを誰か書けという事を言いたかったのではないかと思います。

 ばーっと書いていった以外にも「『由美香』は監督失格に至るサーガ」とか気になるワードをいくつかメモしてたんですがどういう話の流れでその言葉が出たとかはっきり覚えてないので省略しました。ごめんなさい。ってか重要ワードをメモする事で後からその言葉が出るに至った話を思い出そうとして書いてるのに頭の容量が追いついてないからその話自体を忘れてるとか最悪ですね。もっと賢い頭で生まれたかった。。。いや、普通のトークショーのレベルなら何とかメモを元に色々書いていけるんですがすっげぇ密度の濃い80分だったのでこれが限界ですわ。